高知県にお住まいの方々だけでなく、西日本の太平洋沿岸地域の皆さんが憂慮しているのが「南海トラフ巨大地震」でしょう。高知県では「南海トラフ地震への対応」として「避難所開設訓練」も実施しています。
今回、初めて関係者以外の方(民間)も参加できる訓練が実施されましたので、私たち夫婦も参加してきました。
お断り:この投稿は、訓練参加者に配布された「避難所運営マニュアル(訓練用抜粋版)」と「訓練の進行要領」を参考にさせて頂きました。 また、本投稿の中で、私自身の個人的意見は申し上げないようにし、訓練に参加した私たち夫婦が体験してきたことをそのまま皆様にお伝えして、皆様でご判断頂き、南海トラフ地震への備えにして頂ければ幸いです。 |
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訓練の場所と参加者
訓練開催場所
高知県高知市江陽町(こうようちょう)1番30号
高知市立江陽小学校体育館
参加者
・江陽小学校区防災連合会
・高知市消防団江ノ口分団
・高知市役所地域防災担当
・地元の方々
訓練想定
訓練想定は、次のとおりです。
2024年10月6日(日)午前9時、南海トラフを震源とした「マグニチュード8.5」の巨大地震が発生し、高知市内では、広い範囲で「最大震度7」、山間部でも殆どの地域で「最大震度5弱」を観測し、強い揺れは3分程度続いた。 地震発生後、最短10~20分で沿岸部に津波が到達し、数時間かけて高知市内広域に浸水が広がった。 幸い、江陽小学校は30㎝程度の浸水にとどまり、地震により住宅に被害を受けた住民が学校に避難してきた。 |
「津波避難場所」と「避難所」としての江陽小学校
江陽小学校の南側の通りです。この通りは西進(写真手前から奥方向)の一方通行になっています。
「地震・風水害避難場所」の表示があります。
門を入ると左に駐車場があり、右に校舎、まっすぐ行くとグランドです。
グランドの手前に消防車が止まっていました。消防分団の方が乗ってきたようです。
消防車が止まっていたところを右に曲がりました。
グランドの前を通って、右に校舎を見ながら体育館方向へ進みます。
ここが「北舎」と名付けられている3階建ての校舎で、ガラス張りのところが玄関です。
反対側から撮影しました。向こうに消防車が止まっています。距離感と位置関係がお分かり頂けるかと。
左にある屋根の丸い建物が体育館で、2階部分が渡り廊下で校舎(北舎)と繋がっています。
写真右に屈んでいる方が写っていますが、そこを左に曲がると体育館です。
避難して来た方々は、 ・浸水がないときは、屋外(グランド)で待機 ・浸水があるときは、北舎3階および屋上テラスで待機 することになりますが、疾病者や体調不良者がいる場合には、別途対応が必要なことは言うまでもありません。 皆さんで助け合って必要な作業分担をし、避難所の開設を進めましょう。 |
訓練開始前に行ったこと
訓練参加者の受付
まだ訓練開始時刻ではありませんが、準備をしている方々がいました。「江陽小学校区防災連合会」の方々です。
ここが受付です。事前に参加が決まっている方々は名簿に名前があったので出席のチェックだけで、私たちはここで住所と名前を申告して受付が終わりました。
訓練をサポートしてくれた「江陽小学校区防災連合会」の方々と「消防分団」の方々です。
シェイクアウト訓練
訓練に先立ち「シェイクアウト訓練」が行われました。
シェイクアウト訓練は、2008年にアメリカ合衆国で生まれた地震の一斉防災訓練です。
事前に専用サイトに登録した参加者が、指定日時に届く電子メールを合図にして、「そのときにいる場所」で訓練を行います。
「そのときにいる場所」で地震が発生したと想定し、とっさに身を守るという従来の防災訓練とは異なる訓練で、「Drop(低く)して、Cover( 頭を守り)、Hold on(動かない)」とい動作をするだけです。
私たちも訓練に加わっていて、撮影のチャンスを逃してしまい画像がありません。ご了承ください。
まず、その場で「体を低く」し、持っていたバッグを頭上にのせて「頭を守り」、合図があるまで「動かない」という動作で、1分程度その体勢を保持しておりました。
非常時に校舎内に入るには・・
市役所の係の方の案内で玄関右(西)端に集合、そこに非常用キーボックスがあるのを知りました。
このキーボックス内には、玄関ドアなどの学校を避難所として利用するのに必要な鍵が保管されています。
ボックスは、「震度5弱以上で自動的に開錠される」ようになっていて、中にある鍵を取り出し、玄関ドアを開錠して校舎内へ入り、北舎3階、屋上テラスに避難することになります。
「震度5弱以上の揺れでキーボックスが開く」との説明でしたが、「開かなかったらどうするか」という質問がありました。
その場合は、「ガラスを割ってでも校舎内に入り、津波に備えて校舎3階、屋上へ避難してください」ということでした。ガラスを割れる物は見当たりませんでしたが、「固い物を持って来て・・」、ということになるんでしょうか。
キーボックスが開いて鍵を取り出せれば、下の写真の両開きドアが開錠できます。
鍵穴は二つあり、写真の「B」を先に開け、次に「A」を開けてください。「A」は、開けても自動で数秒でまた施錠されるようになっているので、「A]を先に開けると、「B」を開けている間に「A」がロックされてしまう・・との説明がありました。
ドアが開いたら真っ直ぐに進みます。廊下の右に階段があります。
津波避難場所の確認と避難所(体育館)への行き方
奥の教室に、食料や水が備蓄されています。
3階のこの辺りの教室で、揺れがおさまり、さらなる津波の危険がなくなるまで過ごすことになります。
体育館に避難所を開設することになると、体育館へ移動します。
その場合、階段を使って2階に降り、渡り廊下を通って体育館へ向かいます。
渡り廊下を進むと体育館の入口に出ます。ここも施錠されているので、キーボックス内にある鍵が必要です。
体育館に入るタイミングは、校舎で津波避難をし、さらなる揺れや津波のおそれがなくなってからですので慌てずに。
体育館は2階、1階からも上がれます
体育館は2階ですが、校舎からだけではなく、真下のこの場所からも体育館へ入ることができます。
ここから入れるのは、体育館が避難所として開設された後になりますね。
避難所の開設は、まず班分けと役割分担から・・
避難所を開設するための準備作業
体育館に避難所を開設するには、次の4チームの任務分担が必要です。
また、チームを総括するリーダーとリーダーを補助する副リーダーが必要です。
○リーダーは、
・マニュアル(後述)を持って、「リーダーガード」を確認しながら、必要な指示をします。
○副リーダーは、
・リーダーの補助をします。本部で全体を統括する役目があるので、リーダーと各「チーム長」を繋ぎ、指示伝達に混乱が生じないよう常に情報や状況の共有は図ります。
チームは、
・安全確認チーム
・受付設置チーム
・区割りチーム
・トイレチーム
で、各チームのチーム長も必要です。
写真は、チームを分けるために縦に並んでいるときのものです。
4チームに分かれました。
市役所の方から説明
大事なのはここです。この倉庫の中に「マニュアル」と必要な物(運営セット、衛生用品)、備蓄食料などを保管しています。
リーダーは、このマニュアルを確認して避難所を開設、運営していくことになります。
必要な書類もこの中に綴じられています。
避難所開設訓練
避難所とは・・
江陽小学校付近は、南海トラフ地震発生時、「最大2m~3mの津波浸水」が想定されています。
津波の危険がある場合は(津波警報が発令したら必ず)、北舎3階か屋上へ避難して命を守ってください。そのための場所が「津波避難場所」です。
津波や地震の揺れの心配がおさまった後、建物に被害がなく避難所として使用できることが確認されたら、体育館に「避難所」が開設されるということになります。
任務分担
安全確認
これは「安全確認チーム」の担当になります。
余震などによる二次災害を防ぐため、避難所開設前に施設の応急的な安産確認を行います。
避難場所運営マニュアルに避難所安全チェック表が綴じられています。これを使って、
・建物の外観や周辺
・建物内部
をチェックします。
注意しなければならないのは、
・施設に危険を感じる場合は、避難所として使用しない
・点検は安全第一とし、明らかに危険な場合は実施しない
・安全確認が終わるまでは、避難者を建物内に立ち入らせず、駐車場やグランドで待機させる
です。
安全確認チームからの報告により、「避難所としての使用不可」の判断に至ったときは、建物を立入禁止にし、避難者を次の避難所(城東中学校、保健福祉センター)へ誘導します。 注:城東中学校:江陽小学校の東隣り ・・保険福祉センター:高知市塩田町18番10号(久万川橋東の川沿い) |
受付の設置
「受付設置チーム」の担当です。
準備と順序は、
①避難所の安全確認が完了した後、リーダーから受付開始の指示を受ける。
②校舎と体育館の2階渡り廊下に机と椅子を並べ、「一般避難者用」と「要配慮車用」の受付をそれぞれ設置して、受付の表示をする。
③受付で使用する「避難者名簿」、「非接触型体温計」、「手指消毒液」、「マスク」、避難者に配布する「避難者カード」、「筆記具」の準備をする。
廊下に「一般避難者用」、「要配慮者用」の受付を設置しました。
ここに受付を設置できないということは、体育館が相当なダメージを受けていて、体育館自体を使用できない状況になっているということでしょう。
机をL字型に配置しました。正面が「要配慮者用」の受付、右が「一般避難者用」の受付となります。
「一般避難者用」の受付です。マニュアルにはそう書いていますが、訓練ではご覧のとおり「一般り災者」となっていました。
こちらは「要配慮者用」の受付です。こちらも準備が出来ました。
避難者名簿です。これは受付で保管し、通し番号(一番左の枠)をふって避難者全体を把握します。
これは避難者の皆さんにそれぞれ書いて頂く名簿です。整理番号の部分に「避難者名簿」の通し番号をふって、把握しやすくします。
準備ができたらチーム長がリーダーに報告します。
写真は、受付チーム長が、リーダーに「準備完了報告」をしている場面です。
避難所の区割り
避難所として使用する体育館を区割りします
①役割は、
・避難所に通路や着く別の居住スペースなどを指定し、スムーズな受け入れができるようにするために行われます。
②使うものは、
・・避難所区割りセット(カラーコーン・地区名・メジャーなど)
・・フロアシート
・・手指消毒液
・・要配慮者用資機材
③注意点は、
・ご自身の安全を最優先に行いましょう。
区割りチームの訓練の様子
体育館のステージ下に収納場所があり、そこから出した「フロアシート」を敷いています。
シートを敷いた部分が通路になります。
シートを敷いていない部分に「ダンボールベッド」を設置します。そこが避難者のプライベート空間です。
地区名を書いた表示も出来ました。訓練ではこれで完成のようです。
トイレの確保
トイレの確保は、「トイレチーム」の分担になります。
ご覧の下の写真は、体育館から1階に降りる階段に繋がる出入口の様子です。ここを出て右に行くとトイレがあります・・・が、地震発生後のトイレ使用はNGです。揺れで配水管が破損している可能性があり、配水管が破損したトイレを使用すると逆流する・・・という説明がありました。ですから「トイレの設置」は必要です。
ステージの上で簡易トイレを設置していますが、これは訓練だからです。
本番ではここには設置しません。屋外(グランドの隅など)になります。
避難者の受入れ
避難者を受け入れられる態勢が整ったら、受け入れが始まります。受付で貰った「避難者カード」に記入します。
記入したら受付に提出します。
避難者の誘導
要配慮者の受入れと誘導訓練をしています。
車椅子で来られた方を想定して、受付までお連れしています。
ただ、体育館は2階です。エレベーターはありません。車椅子で来られた方には階段を上がるための手助けが必要です。
「椅子を押す人」と別に、階段を上り下りするときには、「椅子の左右を支えてあげる人」2人と計3人は必要です。
また、車椅子に乗っている方は、階段の下方向が見える向きにされると、恐怖を感じるようです。
携わって体験してみて分かったことです。
災害対策本部との連絡
災害対策本部に「避難所の状況を報告」しなければなりません。(災害発生後、概ね24時間後まで)
体育館ステージ横の「袖」に無線機を常設しています。使い方や通話要領はマニュアルに綴じられています。
トイレ使用方法の実演訓練
市役所の方が使用方法を説明してくれました。
まず、椅子に白い便座をセットします。
凝固剤は、排泄の後で入れてください。凝固剤の取扱説明に書いていました。
簡易トイレ
トイレ凝固剤
反省、検討
訓練の終わりに少し時間があって、皆さんからの意見も若干はありましたが、内容は、訓練の進行だとかその辺のことに対するものでした。厳しいご意見もありましたが、ここでは内容は割愛させて頂きます。
まとめ
訓練は、冒頭に述べたとおり、関係者以外の方(民間人)も初めて参加できた訓練だったようです。我々のような行政やボランティアさんとは接触のない者が訓練に参加でき、それも民間人も参加できる初めての訓練に出会えることができたのは大変ラッキーだったと感じます。
皆さん、たいへん真摯な態度で訓練に取り組んでおり、だからこそ厳しいご意見も出るんだろうと感じました。今後、さらに訓練を重ね、南海トラフ地震への備えとしたいものです。